和菓子の力

「今日は何の日」、同じ日でも幾つもの何の日があることに驚くやら感心しています。
またセピア色の思い出話にお付き合いください。今日、6月16日といえばまず私は「和菓子の日」しか思い出さないのです。遡れば848年に始まり江戸時代まで続き、1979年全国和菓子協会があらためて「和菓子の日」と定めたとのことです。
1979年の秋、私は銀座で小さな画廊をオープンしました。未知の世界でもあり、美術品の購入者には個人と企業とに分かれるかと思っていました。私は企業先の開拓に的を絞ることにしました。
企業にトライするには、当時はトップセールスのため、まず関門は秘書室です。手ぶらでは自信がなく、思いついたのが、和菓子でした。四季折々の美しさを感じさせる日本の美しさを拒否する訳はないし、ちょうど3時前に、決まり文句の「近くまで参りましたので」とお持ちし続けました。
事前にいつも同じ和菓子店に予約していました。ある時その和菓子店の店長さんが「いつもお買い上げ頂いてありがとうございます。失礼ですが、私どもの和菓子をいつもお求めになる目的があるのでしょうか」
「実は、私が同じお店の和菓子をお持ちすることで、相手には私の目的を察していただけます 」
約25年間、細腕で続けることができたのは「和菓子」の力によるところが大でした。