蚊が侵入

新型コロナウイルスの約束事の一つに、極力窓を解放していると、懐かしい蚊の音が聞こえる程、東京からは喧騒が消えていた。

妙に気になり、蚊を追いかけようとすると、巣篭もり生活のせいか、加齢のせいか、運動神経が思うように連動してくれない。

虫除けで、身を守るも、気になって来た。
兎に角、コロナのせいで、蚊を媒体にされた新型コロナウイルスでも発生、感染したらと思い巡らしていると、落ち着かないので、夜9時近くに、近くのコンビニで、今夜中に退散或いはコロリと行って欲しいと思った。

既にいくつかの虫除けの商品が並んでいた。
その中に、懐かしい「金鳥の渦巻蚊取線香」を見つけた。

急にふるさとの夏の風景が思い出され、迷うことなく決めたのである。
包装も記憶の中にあるままの蚊取線香を早速、渦巻状の先に火をつける時、そうだマッチで火をつけたが、残念だが、それは叶わなかったが、ベランダに置いて窓を開放して、蚊との根競べとなった。

東京に来て凡そ半世紀以上になるが、渦巻状の蚊取線香を使うとは、線香の匂いにも心地良さを感じ始めている自分に気が付いた。

3月末に母校の白いマーガレットを見ると、確か父親から、昔は真鍋島で蚊取線香の原料の除虫菊を栽培していたという話を思い出した。

念のため除虫菊をネットで確認すると、確かにマーガレットと非常に類似していると分かり、夏の季節に麦藁防止に、マーガレットを付けてくれたのは、もしかしたら、除虫菊だったのかも知れないと想った。
父親は、病弱な私の為に、虫から守る為に、除虫菊だったのではと、父親の愛情に、母校のマーガレットを見ながら、胸の熱くなる想いが、今夜の改めて思い出していた。

確か、日本経済新聞で数年前に金鳥の渦巻蚊取線香が、化学遺産に選出された記憶がある。
僅か1匹の蚊によって、様々な想いを馳せるとは、思わぬ3密の賜物と前向きに発想したと想っている。