長く続いた鬱陶しく重苦しい曇り空の多かった、東京は葉月を迎えると共に、長いトンネルを抜けたように、抜けるような青空に変わった。
と同時に、暑さも急に思い出したように、存在感を増し、これからは夏空が主役といわんばかりである。
眩しく、久しぶりの強い日差しに戸惑いながらも、夏空を実感した。
日中を避けて、それでも、日傘をさしてノルマのお散歩に出かけた。
できるだけ、日陰を選んで、ちょっと遠くの小学校の前の公園で、思い切り、夏空を見上げ、深呼吸をした。
東京の空気も立ち寄った公園は、樹木が多く、とても新鮮な味がした。
耳を澄ますと、蝉の合唱に気が付いたその先の樹木の葉に、きれいな蝉の
抜け殻を見つけ、ふるさとを思いだしていた。
すると、ベンチの周囲を大きなアゲハ蝶が、まるで私を歓迎すかのように
くるくると回っている。
何年振りだろうか、東京にもまだふるさとの佇まいを味わう場があったのは、いささか、気力は持ち堪えているが、体調は些か限界だった。
小一時間、その公園で心を潤す時間に満足し、自宅に向かう夏空に銀翼に
輝いた飛行機が、とても美しく滑るように飛行していた。
きっと葉月は良いスタートの始まりを予想していたが、その通りの心豊かな日になった。