秋の香り

2学期が始まって散歩コースを小学校、高等学校を加えることを必須にして

いる私は、信号が青に変わるのを待っていた。

 

その時、どこからともなく、甘い香りが、マスク越しに匂った。

直感で、直ぐに、金木犀のある公園と、高等学校の周囲を取り巻く金木犀の所に行ってみると、まだ、開花はしていないが、小さなつぼみを蓄えていた。

 

然し、香りは、既に、公園の周囲に立ち込めていた。

マスク越しに、大好きな金木犀の香りを堪能した。

 

高等学校の方の金木犀の根元には、いくつもの、彼岸花が硬い蕾を付けてはいるが、既に数本は開花の気配がみられる。

 

2学期が開校する前に、小さな細い葉だけ残していたのが、彼岸花だったのだと分った。

 

嘗て、病院ボランティアをしていた緩和ケア病棟のフロアには、お庭が続いており、2か所の植え込みの一方は、金木犀だった。

 

終末期の方に、季節を届けるという想いには、金木犀は、秋の香りであり

喜ばれた記憶が蘇ってきた。

 

今、コロナ禍で、社会はどちらかと言えば、人はうつむき状態にある中で

自然は、季節を弁え、正に「今を大切」に、生きているように思える。

 

私たちに香りであったり、花を咲かせ、生きる力を示してくれる。

本当に、その恵みの大きさに、私たちは如何に慰められているだろうか。

 

彼岸花というと、母校のもち米を植えた田んぼの雑草取りや害虫駆除の

体験学習が始まるころではないだろうか。

 

そして、その田んぼの周囲には、根に毒を持つ彼岸花を植えることで、モグラの侵入を防ぎ、稲の成長を守る季節が近いのではないかと、ふるさとの秋に想いを馳せていた。