「飛び魚」のくさや

既に20年以上の時を経ているが、今日は親友が止む無く実家を転居しなければならない事情が出来て、庭の紅梅の梅の木を引き取っていただきたい先はないかとの相談を受けた。

 

近くのお庭のあるお宅に相談した処、喜んでと引き受けてくれた、紅梅の梅の木が、例年より、ぎっしりと、色濃く多くの花が満開になっていた。

 

思わず、素晴らしく勢いのある多くの花が咲き競って、依頼した本人は、若くして突然、心臓麻痺だろうか、詳細は聞いていないが、無くなり、余りの突然の死に奥様も、心の病で、追いかけるように亡くなった。

 

毎年、私は、この三月のお彼岸を迎える季節、本当に仲睦まじく肩を寄せ合って笑顔の絶えない夫婦のことを思いだす。

 

亡くなった釣り好きのご主人から「飛び魚」の話で、なんでも、確か八丈島では「飛び魚」をくさやの干物にするとのことで、頂いた。

 

まさか、飛び魚とは思ってもいなかったが、その味は美味しくて、すっかり、味を占めてしまった。

 

何となく、散歩の帰りに、スーパーに立ち寄ったところ、鹿児島産の「飛び魚」の刺身を見付けた。

 

何という巡り合わせだろうか、私は産地も違うし、くさやの干物ではないが、「飛び魚」に違いはない。

 

瀬戸内育ちの私は、白身の尾頭付きの白身の魚で育った環境もあり、何と

「飛び魚」の刺身も、身が引き締まり、既にこの世にはいなくなったなか睦まじい若き夫婦と、一緒に味わいたかったと、胸が熱くなった。

 

そういえば、今日から春の彼岸の入りだった。