一途な眼差し

嘗て美術の仕事に関わっていた際に、美術館で出会った一つの日本画の前で、私は釘付けになった。

 

京都出身の北沢映月による「一途」という作品である。

改めて、検索すると京都出身の日本美術院評議員で、1990年4月7日に鬼籍の人になっていた。

 

既に33年の時を流れても、はっきりと記憶に残っている。

 

題名の「一途」そのものの、遠くを見つめている目から、ひたすら、ひたむきに目的に向かって歩んでいる姿が、心に沁みる。

 

 今日は「忠犬ハチ公」の記念日で、犬派の私としてもう少し知りたいとの想いに、検索してみると、余りの一途さに涙が止まらなくなった。

 

奇しくも、前日の7日は北沢映月の命日にあたるという縁を感じた。

 

上野英三郎博士と一緒に、渋谷駅の改札口まで送り迎えを日課にしていた期間は、僅か1年と数が月だという。

 

突然の上野博士の死を知らずに、渋谷駅に通いつめ、7年間待ち続けたそうだ。

 

その期間、想像を超える苦しさの中でも、必ずといったそれなりの信念というか、信頼という一途さを感じる。

 

3月8日、11歳の生涯を終えたハチ公は、渋谷駅東口で発見されたと記されている。

 

送り迎えをしている頃のハチ公は、必ずご主人の上野博士と「アイコンタク」をとっていたと察せられる。

 

信頼の眼差しで見つめるハチ公と、一途に目的に向かって歩んでいる北沢映月の女性の眼差しに、私は、これほどまでに、人生に「一途」に成っただろうかと、想い考えさせられた日となった。