何とも今年ほど、いろいろな出来事に振り回された年は記憶にない。
本当に、一刻も早く、新しい年を迎えたいと思ったこともない。
夕刻、中国の留学生から日本の大学の入学試験を受け、新しい年に合否が
わかるという青年と話しているうちに、合格祈願を思い立ち、神社参拝にに誘う。
日中は穏やかだったが、夕刻4時過ぎから、冷たい北風に、首を竦めながら
近くの神社を三ヶ所回ることにした。
まだ、神社には参拝者もまばらで、青年は物珍しそうに見まわしていた。
賽銭箱の前で、日本語学校の教師から、お賽銭の風習の教育を受けているようで、お財布を出して一礼してお賽銭箱に入れた。
次も同じように青年は日本の風習に従った。
いよいよ、三番目がわが住まいの守り神の神社で、青年も知っていたが、
境内に入ったことはないという。
境内で、おみくじを見つけた彼は、珍しそうに私に聞いてきた。
私は、凶が出た場合を案じていたが、なんと思い切って彼はおみくじに
トライしたのである。
おみくじを丁寧に開き、私に見せた。
ラッキー! 大吉だったのである。
私はとてつもない声で大喜びした様子に初めて、大吉について理解したようだ。
帰る途中、何度も何度も、おみくじを開いて喜んでいる青年の表情からは、参拝前のどこか不安を抱えていた暗さはすっかり消えていた。
何度も何度も、おみくじを開いて、ニコニコしている。
そして、もう大丈夫と私に気持ちを伝えた。
一人の青年によって、私の重苦しかったこの一年を、笑顔で締めくくることができたのである。