肉筆の手紙

編集者時代、初めての相手への依頼状には、肉筆で書くように指導を受けていた。

現在でも、そのまま引き継がれている。

私ごときアマチュアにすら行き届いた肉筆の手紙が届く。

丁寧に、きちんと礼儀に適った手紙から、差出人の緊張が推察される。


嘗て、銀行の就職採用を担当している常務から、履歴書の文字について判断するという。


枠内の収まり方、丁寧に記入されているか、字の上手下手ではない等々。

今は、パソコン入力で済む時代に変わっているので、昔話の域である。


久し振りに今回、全く初めての方に差し上げる手紙だが、肝心の便箋が 見つからない。


この便箋にも相手に失礼のないものを使用するとも指導を受けていた。


便箋を開いて、先ず書き始める時の緊張感が私には堪らない。


どの様に受け止めてくれるか、返事があるかないか、全く予測がつかない期間を、ドキドキして待っているのも、負け惜しみと言われそうだが、私には楽しい。