背中を押す

昨夕、まだ空が青く、白い月が微かに見える夕刻、ベランダから、夕日に

銀翼をキラキラ光らせた飛行機が機種を上げ、上昇中である。

 

飛行機を見上げた私は、明日、友人は待ち続けた懐かしい故郷に、機上の人になるのだと思った時、私は心底「良かった」と。

 

介護施設に入所しているものの、高齢である母親を、東京から案じるしかなかった友人は、私と違い、我慢強く、辛抱強いからこそ、今日まで耐えてきた精神力に驚くとともに、見習いたい存在だ。

 

一時の驚異的な感染数が、まるで、マジックのように減少傾向が顕著になってきた今、口には出さないが、友人の母親を案じる気持ちは痛いほどに

私には伝わってくる。

 

帰京すべきか、まだ、慎重に行動するべきか、迷いに迷っている感情が、

日増しに強くなっているのが、表情からもくみ取れた。

 

お節介かなと承知しながら、友人に「最近のコロナの状況からみて、今が

故郷のお母様に会う時ではないかしら?」と。

 

堰を切ったように、その一時間後には、飛行機の予約に始まり、ふるさとの弟や妹に連絡して、素早く行動に移したのである。

 

コロナ禍にあって、私の友人と同じように、自分の感情を抑え、苦しみ、

悩んでいる人が多いだろうと、想いを馳せた。

 

ところで、ところで、私といえば、午前中は体調に問題なく、相変わらず

ゴソゴソと動き回っていた。

 

昼食後、急に体調の変化を感じた私は、病院に連絡をした処、診療可能と

聞き、気持ちがざわついて、ナーバスになっているのが分かる。

 

2日前に受診したばかりであるが、「不安であれば、早く」といった声が

聞こえている。

 

その声に背中を押されて、レントゲン、採血、採尿の検査を受けた結果は

状況は悪化してなく、今の私に必要なのは、しっかり「休養」を取ること

により、エネルギーを使い果たした私の体調の回復はなさそうだ。

 

 晩秋から初冬の空を見上げながら、「先ずはさて置き、休養、休養」と、自分で背中を押すとしよう。